高校数学Ⅱで学ぶ『恒等式』についてわかりやすく解説しました!
『恒等式』に関する問題は、「係数比較法」か「数値代入法」で解くことができます!
この投稿を見れば、『恒等式』に関する問題はバッチリです!
恒等式とは
等式は、『方程式』と『恒等式』に分けることができます。
『恒等式』とは何かを理解するために、『方程式』との違いを理解する必要があります。
方程式…変数に特定の値を代入したときだけ成り立つ等式
恒等式…変数にどのような値を代入しても成り立つ等式
『恒等式』とは文字通り,「恒に(つねに)成り立つ等式」のこと!
具体例をみてみよう!
$(x-1)^2=x^2-2x+1$ は
$x=1$ を代入すると,左辺も右辺も $0$
$x=2$ を代入すると,左辺も右辺も $1$
$x=3$ を代入すると,左辺も右辺も $4$
$x$ にどのような値を代入しても成り立つので,『恒等式』になる
『恒等式』の例
$(x-1)(x-2)=x^2-3x+2$
$\displaystyle{\frac{1}{x-1}+\frac{1}{x+1}=\frac{2x}{x^2-1}}$
左辺と右辺の一方について展開や計算をしたら,他方になるような式は「恒等式」だよ!
方程式と何が違うの?
$2x-1=x+1$ を解くと,$x=2$ となる
これは,$2x-1=x+1$ が $x=2$ のときだけ成り立つという意味
つまり,$2x-1=x+1$ は『方程式』である
「方程式」は特定の数のときにだけ成り立つ式!
「恒等式」はどんな数でも成り立つ式!
恒等式の性質
【性質①】
$ax^2+bx+c=0$ が $x$ についての恒等式であるとき
$a=b=c=0$ が成り立つ
【性質②】
$ax^2+bx+c=Ax^2+Bx+C$ が $x$ についての恒等式であるとき
$a=A$,$b=B$,$c=C$ が成り立つ
証明
$ax^2+bx+c=0$ が $x$ についての恒等式であるとき,どのような $x$ を代入しても成り立つので
$x=0$ のとき,$c=0$
$x=1$ のとき,$a+b=0$ $\cdots$ ①
$x=-1$ のとき,$a-b=0$ $\cdots$ ②
①,②より, $a=b=0$
以上より,$ax^2+bx+c=0$ が $x$ についての恒等式であるとき,$a=b=c=0$ が成り立つ
$ax^2+bx+c=Ax^2+Bx+C$ を式変形すると
$(a-A)x^2+(b-B)x+(c-C)=0$
これが $x$ についての恒等式のとき,(性質①より)
$a-A=0$,$b-B=0$,$c-C=0$
すなわち, $a=A$,$b=B$,$c=C$
恒等式の解き方
恒等式についての問題を解くときに,「係数比較法」と「数値代入法」がある!
それぞれの解き方で問題を解いてみよう!
係数比較法
上で示した「恒等式の性質」を用いて,左辺と右辺の係数を比較して解く方法
$左辺=a(x^2-2x+1)+bx-b+c$
$=ax^2+(-2a+b)x+(a-b+c)$
$ax^2+(-2a+b)x+(a-b+c)=x^2+x+1$ が $x$ についての恒等式なので,
係数を比較すると, $a=1$,$-2a+b=1$,$a-b+c=1$
これを解くと $a=1$,$b=3$,$c=3$
代入法
$x$ についての恒等式とは,$x$ にどのような値を代入しても成り立つ等式ということを用いる解き方
どのような $x$ についても成り立つので,
$x=1$ を代入すると, $-2c=8$ すなわち $c=-4$
$x=2$ を代入すると, $3b=9$ すなわち $b=3$
$x=-1$ を代入すると, $6a=12$ すなわち $a=2$
よって, $a=2$,$b=3$,$c=-4$
展開するよりも代入する方が簡単な場合は,「代入法」の方が解きやすいね!
この問題は $x-1$,$x-2$,$x+1$ があるので,$x=1,2,-1$ を代入すると計算しやすいね!
分数式の恒等式
$\displaystyle{\frac{3}{x^2+x-2}=\frac{a}{x-1}+\frac{b}{x+2}}$ より,
$\displaystyle{\frac{3}{(x-1)(x+2)}=\frac{a}{x-1}+\frac{b}{x+2}}$
両辺に $(x-1)(x+2)$ をかけると
$\displaystyle{3=\frac{a}{x-1}\cdot(x-1)(x+2)+\frac{b}{x+2}\cdot(x-1)(x+2)}$
$3=a(x+2)+b(x-1)$
$(a+b)x+(2a-b)=3$
$x$ についての恒等式より,係数を比較して
$a+b=0$,$2a-b=3$
これを解いて, $a=1$,$b=-1$
等式なので,両辺に同じものをかけるところがポイント!
まとめ
● $x$ についての恒等式
どのような $x$ についても成り立つ等式
● 恒等式の性質
【性質1】
$ax^2+bx+c=0$ が $x$ についての恒等式であるとき,
$a=b=c=0$ が成り立つ
【性質2】
$ax^2+bx+c=Ax^2+Bx+C$ が $x$ についての恒等式であるとき,
$a=A$,$b=B$,$c=C$ が成り立つ
● 恒等式についての問題の解き方
「係数比較法」と「代入法」がある
● 分数の恒等式の問題の解き方
両辺に同じものをかけて解く
問題
(1) $(ax+2)(x+1)+b(x-1)^2+c=0$
(2) $ax(x-1)+bx(x+1)+c(x-1)(x+1)=x^2-3$
(3) $\displaystyle{\frac{x}{x^2-5x+6}=\frac{a}{x-2}+\frac{b}{x-3}}$
(1) $(ax+3)(x+1)+b(x-1)^2+c=0$ 【係数比較法】
$左辺=ax^2+ax+3x+3+b(x^2-2x+1)+c$
$=(a+b)x^2+(a-2b+3)x+(b+c+3)$
$x$ についての恒等式より,
$a+b=0$ $\cdots$ ①
$a-2b+3=0$ $\cdots$ ②
$b+c+3=0$ $\cdots$ ③
①,②より, $a=1$,$b=-1$
③に代入して, $c=-2$
よって, $a=1$,$b=-1$,$c=-2$
(2) $ax(x-1)+bx(x+1)+c(x-1)(x+1)=x^2-3$ 【数値代入法】
どのような $x$ についても成り立つので,
$x=0$ を代入して, $-c=-3$ すなわち $c=3$
$x=1$ を代入して, $2b=-2$ すなわち $b=-1$
$x=-1$ を代入して, $2a=-2$ すなわち $a=-1$
よって, $a=-1$,$b=-1$,$c=3$
(3) $\displaystyle{\frac{x}{x^2-5x+6}=\frac{a}{x-2}+\frac{b}{x-3}}$
$\displaystyle{\frac{x}{x^2-5x+6}=\frac{a}{x-2}+\frac{b}{x-3}}$ より
$\displaystyle{\frac{x}{(x-2)(x-3)}=\frac{a}{x-2}+\frac{b}{x-3}}$
両辺に $(x-2)(x-3)$ をかけると
$\displaystyle{x=\frac{a}{x-2}\cdot (x-2)(x-3)+\frac{b}{x-3}\cdot (x-2)(x-3)}$
$x=a(x-3)+b(x-2)$
$(a+b)x+(-3a-2b)=x$
$x$ についての恒等式より, $a+b=1$,$-3a-2b=0$
これを解いて, $a=-2$,$b=3$
落ち着いて計算すれば解けるね!
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