文字係数の1次不等式とは
この問題のように,$x$ の係数に文字が含まれている1次不等式を,『文字係数の1次不等式』といいます。この問題を解くときには,場合分けが必要です。なぜ場合分けが必要なのか考えてみましょう。
不等式の両辺を割る場合の注意点
両辺を $a$ で割って
$\displaystyle{x<\frac{1}{a}}$
じゃないの?
それではダメだよ!
不等式の性質を復習しよう!
正の数で両辺を割る場合は不等号の向きは変わらない
$$2x<4 ⇔ x<2$$
負の数で両辺を割る場合は不等号の向きは変わる
$$-2x<4 ⇔ x>-2$$
正の数で割る場合と負の数で割る場合は,不等号の向きの考え方が異なる。
『両辺を $a$ で割る』というのは,
$a$ の値が正の数なら不等号の向きが変わらず,負の数なら不等号の向きが変わる,といったように,$a$ の値によって計算結果が異なる。
つまり,$a$ の値について場合分けをして計算する必要がある。
場合分けの考え方
[1] $a>0$ のとき
$ax<1$
$x$$<$$\displaystyle{\frac{1}{a}}$
両辺を $a$(正の数)で割るので不等号の向きは変わらない
[2] $a=0$ のとき
$$0\cdot x<1$$
$0$ で割ることはできないためこれ以上式変形を考えません
$x$ にどのような値を代入しても左辺は必ず $0$,右辺は $1$ であるため,$0<1$ となり,常に不等式が成り立ちます。
よって,この不等式の解は『$x$ はすべての実数』になります
[3] $a<0$ のとき
$ax<1$
$x$$>$$\displaystyle{\frac{1}{a}}$
両辺を $a$(負の数)で割るので不等号の向きは変わる
[1],[2],[3] より,答えをまとめると
\begin{eqnarray} && a>0 のとき x<\frac{1}{a} \\\\ && a=0 のとき xはすべての実数 \\\\ && a<0 のとき x>\frac{1}{a} \end{eqnarray}問題演習
[1] $a+1>0$ すなわち $a>-1$ のとき
\begin{eqnarray} (a+1)x & > & a^2-1 \\\\ (a+1)x & > & (a+1)(a-1) \\\\ x & > & a-1 \end{eqnarray}両辺を $a+1$(正の数)で割るので不等号の向きは変わらない
[2] $a+1=0$ すなわち $a=-1$ のとき
$$0\cdot x>0$$
$x$ にどのような値を代入しても左辺は必ず $0$,右辺は $0$ であるため,$0>0$ となり,常に不等式が成り立ちません。
よって,この不等式の解は『解はない』になります
[3] $a+1<0$ すなわち $a<-1$ のとき
\begin{eqnarray} (a+1)x & > & a^2-1 \\\\ (a+1)x & > & (a+1)(a-1) \\\\ x & < & a-1 \end{eqnarray}両辺を $a+1$(負の数)で割るので不等号の向きは変わる
[1],[2],[3] より,答えをまとめると
\begin{eqnarray} && a > -1 のとき x > a-1 \\\\ && a=-1 のとき 解はない \\\\ && a < -1 のとき x < a-1 \end{eqnarray}
🔰基本…まずはこの記事から!
🔵標準…基本問題や公式の理解度が重要!
🔴応用…場合分けなど思考力が要求される!
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